ポエム
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真っ白なミルク
僕は大切な人と二人、ファミレスの席に座って
真っ白なミルクに口をつけていた。
シロップも入れて、甘い甘い、飴を溶かしたようなミルク。
一口、また一口飲む毎に、いまはもういないあなたのことを、考えてしまって。

僕の目線の先には、ファミレスの床。
見間違いだろうか、真っ白な毛並みに鍵しっぽが付いた、一匹の猫が横切った。
すると途端に、見ている景色が反転した。

そこは雪原のような世界だった。
青紫の栗鼠に、レモン色の蛙、太陽の色をした雲雀が、楽しそうに遊んでいた。
どこを見ても真っ白、真っ白だった。

後ろから子供の声が聴こえた。
僕は振り返った。
そこには鍵しっぽの付いた、真っ黒な猫が、凛として座っていた。

「ここは失った人に出会える世界。私は案内役の使用人。あなたの考えていた人は、ボートを出して、海に繰り出せば出会えます」

僕は一目散に、浜辺に向かった。
目がくらくらした。
周りは真っ白、真っ白なのだから。

銀のボートに乗って、僕は櫂を力いっぱい漕ぐ。
進め、進め。
真っ白な海を。

沖に出たらば、海豚の群れに出会った。
みんなほうれん草の色をしていた。
一匹、小さな子供のイルカがいた。
ボートの側面を、くちばしでツンツン叩く。

「タロウくん?ここまで追いかけて来てくれたのね。でも私はもう、あなたの世界にはいれないんだよ。だからね、あなたの世界で大好きな人を、ずっとずっと、変わらずに好きでいること。いまある愛おしい気持ちを、大切にすること。」

僕は涙が止まらなかった。あなたに会えたのに、会えたのになぜ。
悲しみの深さは、真っ白、真っ白で。
でも僕はもう、ここにはいられないのだと。ここに来たときからずっと、わかっていた。

あなたを失ったから。あなたが僕の世界から、消えてしまったから。もう二度と、会えないから。
だから僕は、今ある「大好き」を、噛みしめることができる。
「大好き」がずっと、「大好き」なまま。
この真っ白、真っ白な世界を、出たら言うんだ。
目の前の席に座る、あの子に。
ずっとずっと、ありがとう、と。
ずっとずっと、
ずっとずっと、
ありがとう、
と。
24/03/06 11:49更新 / たろう



談話室

■作者メッセージ
物語性のある散文詩に挑戦しました。去っていってしまった人の記憶はいつまでも残る傷となり、決して癒えることはないかもしれない、けれど、その喪失があったからこそ、今ある人間関係を、心から愛おしく思うことができるのだと考えます。

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