ポエム
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月は視ている
月は照らした。
僕が死体を、土に埋めるのを。
青白い視線が空を突き抜け。
真っ赤な涙で濡れる僕の手。

月は視ていた。
僕が子犬を、ボグボグ殺すのを。
子犬は大きくしっぽを振って、
僕の臑へと、頬を寄せてきた。
僕は子犬を向こうへ蹴飛ばし、
一心不乱に殴りなぐった。

月は知ってる。
僕が子犬を愛していたのを。
だのに、殺してしまったのを。

月は決して。
決して僕を、許さない。
子犬の命は、決して。
決して命は、生き返らない。

月は視ている。
僕が今夜も、ご飯を食べるのを。
僕が今夜も、眠りにつくのを。
僕が今夜も、優しい夢を、
夢を観ながら、微かに笑うのを。

月は知ってる。
僕に殺された、あの日の夜に
彼女が僕に、寄せていた思慕を。
あの眼差しが、真実だったのを。
24/02/26 00:03更新 / たろう



談話室

■作者メッセージ
自己模倣の作品です。
僕が過去に傷つけてきてしまった人の心を「子犬」に象徴させています。

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