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起重機姫
     


「あっつぅーう!」
炎天下の作業で汗だくとなり
おもわずコクピットで作業ジャンパーをはだけた
とはいっても下には周到に水着のブラをつけている
ひょおぅよぉー♪姫が姫がと下から甲板員の男どもが歓声やら口笛やらをあげて躍りまわる
「うっさい!見んなっ」
おもわず備忘録兼チェックファイルを階下になげつけた

あたし 二階堂浮は田邊土建にはいって三年め
わが社がここ半年浚渫と建材搬送を請負っている立石の運河はきょうも太陽に水面がキラキラ耀く
うちの老朽化した平甲板型起重機船にただ一機ついたクレーン機の操作がすっかり板についたあたしは作業中のこの時間が好きだ
水面の輝きと水上を撫でる風の膚へのここちよさが好きだ
『自営起業めざして海洋大学の港湾土木過程定時制を受けんかね、二階堂。費用は勿論会社持ちだ』恰幅のいい田邊社長に持ちかけられたが問答無用に一蹴した
そりゃまあ じぶんの会社と船には多少興味あるけどね
あたしはこの脳筋丸出し起重機船の鉄腕をおもうがままに奇やつって
海や川からの拾いものをどしゃっと甲板のうえに大披露する行程がだいすきなだけなんよ
姫だなんておこがましいや ちょっち テレるけど

21/04/26 00:45更新 / OTOMEDA



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