ポエム
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メダル
黄金のメダルを、腰にぶら下げて
うねるような寒さを駆ける、
軽便鉄道に乗り込んだ。
これは僕だけに渡された、自由乗車券。
何回だって、乗っては旅できる。

終点の駅は、憧れ。
そこにはあなたが、マフラーをもって待っている。
何回だって、僕は乗り込んだ。
一等星の鳴き声のような汽笛をあげる、
銀河軽便鉄道に。

けれどもいつも、空気が薄くなって
呼吸が苦しくなって
僕は途中で、下車してしまう。

学校という駅を通過して、
仕事という駅を通過して、
最後に恋愛という駅を通過した。

失敗、失敗、失敗。
あれも、これも、それも。
僕の人生は、失敗だらけで。
けれどもここまで、僕は来たんだ。
あなたに届く、あと少しまで。

車掌が切手を確かめに来る。
僕は腰にぶら下げた、メダルを示す。
「やあお兄さん、今宵は遠出だね」
「ええそうです。今日は終点まで」
「あらそうでしたか、ではお冷やをサービスいたしましょう」
「これはこれは、かたじけないですな」
車掌の手から注がれた、水を一口飲んで
僕はえらく勇気が湧いてきた。

今まで散々、泥のなかを駆けて、
裸足で駆けて、
転んでは泥だらけになった。
そのすべてを、本当に失敗と呼ぶのかえ。

今まで体に付いた泥が、
今まで舐めてきた泥が、
今こんな風にして、
心の産物として、
違う形に組み換えられた。

車掌にもらった水の一口が、
こんなにも清かったのは、
今まで戦ってきた、僕の体の骨が
べらぼうに凝っていたからだろう、な。
24/01/18 14:33更新 / たろう



談話室

■作者メッセージ
宮沢賢治さんの作風になんとか近づけようとして、あがいた詩です。

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