ポエム
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虫・修正版
頭蓋骨の中の水餃子を食べていた虫は、
いつからかいなくなりました。
なぜいなくなったのか、
僕にもまるで検討がつかないのですが、
虫は確かにいなくなったのです。

僕と虫との戦いは、
熾烈を極めるものでした。
なぜかって、
虫が右を向けといえば右を向き、
左を向けといえば左を向かなければならなかったからです。
マリアの死や、大東亜戦争の悲鳴だって目にしました。

僕はついに、過呼吸になって倒れました。
そのとき、とても幸せな夢を見ました。
そこにはお母さんがいて、僕の体にはまだ、虫が棲みついていませんでした。
ところが目を覚ますと、現実は氷柱のようです。

虫は、目を覚ました僕に、僕がもっとも見たくないものを見せてきました。
それは、あなたの火に焼かれる姿です。
業火のなか、あなたは叫びました、僕の名前を。
僕が犯人だと、あなたは叫んだのです。

僕は今でも、その声を忘れることができません。
火に焼かれ、真っ黒になったあなたは、最後に消えました。緑色の炎となって。

紅炎は消えたのに、エメラルドのその炎だけは、今でも小さくパチパチ燃えています。
どうやったって忘れることのできないのは、あなたの顔に張り付いていた、あの能面です。
23/08/27 21:19更新 / たろう



談話室

■作者メッセージ
以前投稿した「虫」の修正版です。
カルチャーセンターの詩の先生に、虫との戦いの描写が少なくて物足りないと言われたことから、作り直しました。

「虫」は何の象徴でしょうか。以前作った詩とは象徴しているものが違います。

ここではあえて答えを言いますが、僕の「人を傷つけてしまう性質」のことです。
僕はそんなこと望んでいないのに、人生の節々で人を傷つけてしまいます。もう何年も前のことですが、絶対に傷つけたくなかったあなたのことも、深く傷つけてしまったのです。

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