ポエム
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破壊
僕らの手足は切り取られた
鋭い歯の電動鋸
体もやがてバッサリ切り落とされるだろう
人間達が遊ぶ為の大型の施設が作られるらしい
髪の毛を乱して抵抗するも虚しく
はらはらと散ってゆくだけ

僕らの命はこうも粗末に扱われるのか
僕らの安住の地であるはずの植物園
もう安らかな憩いの地ではなくなりつつある
虚しさと悲しみと悔しさと名残惜しさ
ごちゃ混ぜになりながら
なすすべもなく立ち尽くす

隣では轟音とアスベストの煙を立てながら
資料館だった建物が壊されていく
人間達は皆避けるように
向こう岸へ交差点を渡ってゆく
逃げ場のない僕ら
穢れた空気を吸わされ
体も切り刻まれて
行き場すら失いつつある

人間でも確かに
手を差し伸べようとしてくれた者達もいた
街行く人に呼びかけ
署名を頼む人々
僕らの場所を失わないように立ち上がり
声を上げて奮闘した人も推した人もいた
しかしその努力も虚しく
僕らの環境は著しく変わろうとしている

もし僕らに声があればこう叫ぶだろう
全ての人間の無関心が僕らを殺す
破壊を止められるのは貴方達人間なのだと
24/04/27 19:52更新 / 秋乃 夕陽



談話室



■作者メッセージ
この詩が書かれた数週間後、この「破壊」の計画は一旦は断念され、植物園とその周りの環境は守られました。
これも地元の人の弛まぬ努力と熱意のおかげだと思います。
身近な自然環境に対して無関心でいられないという思いが伝わったのでしょう。
しかし計画はまだ完全には断念されたわけではなく、他の地域に移っただけなので、注視は必要です。

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