ポエム
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心がしろい膿を出す。
じゅくじゅくと燃える腫れた患部を、
ナイフで切って、
悪いものを除く。

その繰り返しの中に、
僕は真っ赤な幻影をみた。

笑っているようにも、
怒っているようにもみえる、
牙を突き出した死神の顔。

そいつと目があった僕は、
恐れ慄き、
しかし、
不思議と心が鎮静した。

僕をあの世へ、
誘ってくれる。

僕の頭を激しく殴る、
金槌のような怒りを、
あの無のなかへ、
投げ込んでくれる。

そいつは、
壁のなかに棲む精霊なんかより、
よっぽど僕の、
理解者だった。

床下を流れる、夏の血脈。
自分の鼓動と、重なるリズム。

この忌まわしい騒音を止められるのは、
この、
ナイフだけ。
23/06/05 11:47更新 / たろう



談話室

■作者メッセージ
大学に入学してから、一年間お付き合いした恋人との、失恋を経験しました。その時の心情を詩にしました。

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