ポエム
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生き地獄
大きな体育館が、内側の黒いカーテンで閉ざされて薄暗い中、繊細に重なる歌声と
ピアノのメロディが響き渡る。
次の番がやってきた女の子は、滑らかな鍵盤の上に二つの手をおいた。
その時から永遠の地獄が始まった。
女の子は、頭の中でしっかりと慣れ親しんだメロディが流れ始めるが、手は動こうとしない、いや動けないのだ。そこで、女の子はドキリとした。その理由は、今日の本番まで少しも練習をしてこなかったことを思い出したのだ。
だがその事実に逆らうように、
女の子は頭に流れるメロディを再現しようと、手を動かす。が、弾けない。やっぱり弾くことができない。
それから周りの生徒と先生は騒めき始めた。みんなが彼女を見つめる。弾けないことが周囲に伝わったぐらいの、ずっと長く感じる数分の時間が経って、そのステージは無様に終わった。
そのあとの女の子は、どこにいても何をしていても、責められる声や悪口をいう声、自分に向かう何人かのひそひそ話などが、女の子の中で鳴りやむことはなかった。女の子は地獄のような毎日を過ごしているうちに、死ぬことを考えるようになっていった。早く死ななきゃ、そしてこの罪を償わなくちゃ。女の子は生きている人間とは思えないくらいに疲れ果てた姿になっていた。
死ななきゃ、きっとこのステージは終わらない、皆は許してくれないのだと。
黒いカーテンで閉ざされた暗い体育館に、死にきれない女の子を一人残して…。

女の子は汗だくになっていることに気が付いて目が覚めた。
重い瞼
熱い体
痛むお腹
午前6時47分
23/10/22 16:54更新 / 霜花



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