ポエム
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あなたの顔の上を走った黒い影が
僕がゴキブリのようだと訴えるので

僕はこの場所から立ち去ることを選びました
それが間違いだと誰が証明できるでしょうか

僕の放つ言葉は教室に舞う埃となり
空気を濁した
その淀んだ空気を吸ってあなたは顔を曇らせた

僕が僕である限り
僕の世界はいつも霞んでいく

どこまで行っても
いつまで待っても

この永遠のループから僕は逃れられない
やって来るはずの春は、もうとうに終わっているのです

すでに終わった僕の春に、いまさら何を求めましょう
いまさら何を嘆きましょう

僕に構わないでください
あなたの放つ言葉はすべて嘘なのです

煌々と照る天井の明かりを見つめていると
僕の魂は自ずから何処かへ流れていってしまいます

僕の笑顔はカメムシに似ている 
あなたのその目に一切の悪意はない

今日も日が暮れて月が登るように
小川の水が下っていくように
それはこの世界の理
僕に逃げ場などありません

そしてあなたが僕に嘘をつくのも
親鳥がひなを護るのと同じ

僕のものではない誰かの体が
コンクリの上を一歩一歩あるいて行く

地表から生えたいくつもの棘を
あれは電柱だと気がつくまでに
一体どれほどの時間が過ぎたでしょう

目を開けたままみた夢が明け
目に飛び込んでくるのは薄暗い踊り場

僕を包み込んでくれる世界は、
畢竟ここにはないのです。
23/03/28 21:20更新 / たろう



談話室

■作者メッセージ
僕は、人の表情の変化などにとても敏感で、小さい頃から苦しんできました。

「あなたの顔の上を走った黒い影」とは、同級生の顔が一瞬だけ陰ったように感じたことを表現しています。
同級生と楽しく話しているとき、その子の顔が陰り、僕のことをゴキブリのようだと訴えているように感じたのです。

また、親鳥がひなを護るのと同じように、僕に嘘をついた「あなた」とは、そのときお世話になっていたスクールカウンセラーのことです。
当時、肯定的なことを言ってくれるスクールカウンセラーの言葉を信じられなかったのです。

今までたくさん詩をつくってきましたが、この詩が一番僕の性質を理解するために適した詩だと思っています。

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