ポエム
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麝香豌豆開花日譚


鈍色が輝く夜。街は緋色に染まり、雨は色を覚えていた。

幽かに聴こえる旋律は、黄色の喧騒に掻き消され、

僅かに湧き出る戦慄は、緑色の希望を掻き消した。

永遠かと思われた時は過ぎ、いつもの様に夜は明けた。

最後に残ったのは私と言う孤独だけだった。

活字を走らせ、少しでも記録を残そうとした。

読む者なんて、もう残って居ないのに。

私は一度手を止め、腐敗した酸素を肺に取り込んだ。

ふと、机の端に飾られたスイートピーが眼に映った。

その花は穢れた世界で尚、力強く咲き誇っていた。

スイートピーの甘い香りを嗅ぎ、気持ちを整えた。

破壊も再生も、全ては犠牲を糧に回っているのだ。

そんな事を胸に叩き込み、私は78億の希望を創る決意をした。

最後の花と瀕死の世界に別れを告げ、私は創られた神を動かした。
20/05/20 15:22更新 / 湯呑 軸



談話室



■作者メッセージ
────幸運を。日常よ、永遠なれ。

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