ポエム
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ホチキス
入社して何年か経ち
大きな仕事も任されるようになった


「宜しくお願いします。」


握手をした

その人の手は温かく
湿っていた

そして

自分の手は
もっと湿っていた






そうして
誰かと
なにかをやり遂げる度に


もっと
認めてほしい


もっと
褒めてほしい


こんなに努力したのになんで


満たされることのない
そんな思いが頭をぐるぐる巡るようになった



今よりも
たくさんの情報や人を
上手くまとめられたら

掴んで綴じて
離さなかったら

認めてくれるのだろうか
満足してくれるのだろうか



そんな思いから逃れたくて
解放されたくて



いつの頃からか


情報も人も
力まかせに綴じるようになった


返った針が表に貫通して
時にはケガもした


綴じたものが薄過ぎただけ
中身がなさすぎただけ

そう自分に言い聞かせながら


慣れてきたら
一度にたくさん綴じれるように
大きな針も使うようになった


ガチッ!

うんも言わさずに綴じていた

気持ちがいいものだった





とある日

握手をした

その人の手は渇いていて
冷たかった


そして

自分の手は
もっと冷たく

渇ききっていた
20/02/28 13:45更新 / もぐり



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