大人になることは残酷な事だ。
小さい頃は見えていたものが大人になると見えなくなる。小さい頃に見えなかったものが、大人になると見えてしまう。手品のタネ知らないまま生きていられたらどれほど良かっただろうか。しかし私は知ってしまった。舞台装置の仕組みを。
大人になることは残酷な事だ。
あんなに綺麗に見えていたビー玉は、今となってはただのガラクタにしか見えない。キラキラして空を映す、ずっと秘めておきたい宝物のような存在だったもののはずなのに、いっそ砕けてガラスが飛び散る方がキレイだと思ってしまう。私はもう清くない。
あの頃の私はどこへ行ってしまったのだろうか。いや、どこに置いてきてしまったのだろう。どこかに隠した訳ではない。置いてきてしまったのだ。私の、20年余りの過去に。過去にもどる術は無い。だから私は残酷なまま大人になり続けなければならない。
目を輝かせた世界の全てが、今私の目に鈍色に映る。色褪せた世界で、たった一つ色付いた何かを掴みたい。それが叶えばきっと私は、そう考えている時点で私の目には決して何も見えないのだ。
世界とはそういうものなのだ。
大人になることは残酷な事だ。そして本当は悲しい事なのだ。
あの頃に見えていた小さな閃も、今ではとても見つけられない。あの頃は知らなかった大人という夢も、今では嫌という程に突きつけられる現実でしかない。無垢な目をした子供を見て、自身の穢れを知る。洗っても洗い落とすことの出来ない穢れ。きっとこの穢れを隠しながら、あるいは、目を背けながら生きていくのだ。
大人になることは辛いことだ。

■作者メッセージ
バイト中に考えてました。語彙力は無いですがみなさんの心の目で暖かく見てください。