ポエム
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城壁
「ありがとう」

何気ない一言から始まっていたのかもしれない
特別なことをしたわけじゃない
日常に幾度となく行われるような些細なこと

彼にとっては普段どおり
私にとっても普段どおり

当たり前がいつしか当たり前じゃなくなっていく

積木のように一段づつ積まれていく
彼の優しさに触れる度に積まれていく
一段 また一段

最初は夢中だった 積木がどんどん大きくなる
楽しい気持ちでいっぱいだった
ほら もうすぐお城の完成

「ありがとう」

同じ言葉でも込められた想いによって重みが異なる
心から素直に言えてたのに
彼はいつもと変わっていない 変わっていないのに

彼にとっては普段どおり
私にとっては痛みが増すだけ

もう昔のように笑いあえないのかもしれない

積み重ねて出来たお城に喜んでいた
彼の優しさ以上を求めるようになっていた
一つ また一つ

慌てて結果を求めすぎたのかもしれない
どんどん大きくなる心を満たすため
城壁が崩れていく音がする
20/03/17 00:48更新 / 雪月 葵



談話室



■作者メッセージ
自分の心を満たすために積み上げられたお城は、いつか崩れてしまう
かもしれない。
自分勝手な行動をしていないか、ちゃんと考えて行動しなくちゃと思います。

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