石の仏
まあるい 間ができて
日だまりになみだが 池をつくった
という 嘘の言い伝えが ある
なみだは 血液からうまれる
まあるの 間は
白隠禅師の 掛け軸にあるが
実は 日だまりなんかじゃない
ここは昔 戦場で
多くの百姓兵が 折り重なって死んだ
誰も涙なんか 流さない 現実に
気が 違ってしまった者だけが
この世の 真実を見た
だから 何を言うこともできない
ここは昔 戦場で
日だまりじゃなく 血だまりができた
百姓兵は 供養もされず
未だ 息がある者も 野ざらしにされ
鴉の餌になって 死んでいった
たとえ死んでも 行くのは浄土だと
言い聞かされていた
そんな莫迦な話はない
気休めだ
それでも なさけのあるひとはいて
野ざらしの百姓兵を 供養しようと
野仏を石に彫り
安らかであれと ここに据えた
野仏は 気休めなんかじゃなかった
石に宿る もの
石に 澄んだみ心が 宿り
ほんものの 石の仏となる
むかしのひとは 偉かったのだ。
日だまりになみだが 池をつくった
という 嘘の言い伝えが ある
なみだは 血液からうまれる
まあるの 間は
白隠禅師の 掛け軸にあるが
実は 日だまりなんかじゃない
ここは昔 戦場で
多くの百姓兵が 折り重なって死んだ
誰も涙なんか 流さない 現実に
気が 違ってしまった者だけが
この世の 真実を見た
だから 何を言うこともできない
ここは昔 戦場で
日だまりじゃなく 血だまりができた
百姓兵は 供養もされず
未だ 息がある者も 野ざらしにされ
鴉の餌になって 死んでいった
たとえ死んでも 行くのは浄土だと
言い聞かされていた
そんな莫迦な話はない
気休めだ
それでも なさけのあるひとはいて
野ざらしの百姓兵を 供養しようと
野仏を石に彫り
安らかであれと ここに据えた
野仏は 気休めなんかじゃなかった
石に宿る もの
石に 澄んだみ心が 宿り
ほんものの 石の仏となる
むかしのひとは 偉かったのだ。