欲望〜メタモルフォーゼ
透きとおる雪が
地上に舞い落ち消えてゆく
雪に埋もれていた林道が
冷たく濡れて
艷やかな素肌を晒している
路傍には
行き倒れた鹿の亡骸が
ひっそりと横たわり
雪に濡れたその表情は
それがもうここにはいないことを
知らせる
喜びと苦しみの波間を揺蕩う
穴の空いた ちっぽけな舟で
延々の水汲みが止めば
もはや満たされぬ苦悩も
沈みゆく恐怖もない
荒れ狂う情熱は
うららかに凪いで
波と波が重なり合っては
やがて静かに消えてゆく
止まない雨は 命の物語
君に降り注いでいた雨は
ようやく止んだんだね
月へと還るかぐや姫を
誰も引き止められなかったように
微かな思い出だけ残して
去ってゆく
敗者の罪で投獄された地下牢も
するりと抜けて
誰かを押しのけたり
何かを犠牲にすることのない
世界へ旅立ってゆける
勝利の美酒でさえ
甘党の自分には
後ろめたく
後に引きずる苦みだし
繁栄こそが勝者の証なら
繁栄などいらない
そうであること と
そうであると言うこと
は違うから
わざわざイチ抜けたと
誰彼構わず宣言しなくても
やがて時は訪れる
悪魔さえ祝福された
この世の中で
人間の醜悪さが
その美しさを凌いだからって
そんな損得勘定がどうした?
こんなちっぽけな自分ごときが
そんなことを悩んでも仕方ない
生半可な知恵を反省し
謙虚に悩むよう自戒して
意識の鏡に映った自分の姿に
驚きもし 嘆きもしながら
でもなんとか気を取り直して
外界を見やれば
意識の鏡も即座に
それを自身へ伝える
鏡を持った動物
この奇妙な生き物よ
降り注ぐ情報の雨の中で
欲望という指向性にまみれて
鈍く光る歪な鏡
自分という
この奇妙な存在に出会えたことが
ありふれた でも
いちばんの奇跡なのかもしれない
木枝の分かれ目にへばりついた
イラガの繭がふと目に止まる
可愛いマーブル模様の命の殻よ
去年の夏には
元気に葉っぱを食んでいた君も
幼生だったときの
記憶はすっかり忘れて
今年の夏には
新しい命として
生まれ変わるのだろうか
そして
一週間ばかり 飲み食いもせずに
異性との契りだけをひたすら求めて
この世界をさすらい また
新しい世界へと旅立つのだろうか
いつの間にか雪は止んでいた
君にも聞こえているのだろうか
ざわめく春の波音が
地上に舞い落ち消えてゆく
雪に埋もれていた林道が
冷たく濡れて
艷やかな素肌を晒している
路傍には
行き倒れた鹿の亡骸が
ひっそりと横たわり
雪に濡れたその表情は
それがもうここにはいないことを
知らせる
喜びと苦しみの波間を揺蕩う
穴の空いた ちっぽけな舟で
延々の水汲みが止めば
もはや満たされぬ苦悩も
沈みゆく恐怖もない
荒れ狂う情熱は
うららかに凪いで
波と波が重なり合っては
やがて静かに消えてゆく
止まない雨は 命の物語
君に降り注いでいた雨は
ようやく止んだんだね
月へと還るかぐや姫を
誰も引き止められなかったように
微かな思い出だけ残して
去ってゆく
敗者の罪で投獄された地下牢も
するりと抜けて
誰かを押しのけたり
何かを犠牲にすることのない
世界へ旅立ってゆける
勝利の美酒でさえ
甘党の自分には
後ろめたく
後に引きずる苦みだし
繁栄こそが勝者の証なら
繁栄などいらない
そうであること と
そうであると言うこと
は違うから
わざわざイチ抜けたと
誰彼構わず宣言しなくても
やがて時は訪れる
悪魔さえ祝福された
この世の中で
人間の醜悪さが
その美しさを凌いだからって
そんな損得勘定がどうした?
こんなちっぽけな自分ごときが
そんなことを悩んでも仕方ない
生半可な知恵を反省し
謙虚に悩むよう自戒して
意識の鏡に映った自分の姿に
驚きもし 嘆きもしながら
でもなんとか気を取り直して
外界を見やれば
意識の鏡も即座に
それを自身へ伝える
鏡を持った動物
この奇妙な生き物よ
降り注ぐ情報の雨の中で
欲望という指向性にまみれて
鈍く光る歪な鏡
自分という
この奇妙な存在に出会えたことが
ありふれた でも
いちばんの奇跡なのかもしれない
木枝の分かれ目にへばりついた
イラガの繭がふと目に止まる
可愛いマーブル模様の命の殻よ
去年の夏には
元気に葉っぱを食んでいた君も
幼生だったときの
記憶はすっかり忘れて
今年の夏には
新しい命として
生まれ変わるのだろうか
そして
一週間ばかり 飲み食いもせずに
異性との契りだけをひたすら求めて
この世界をさすらい また
新しい世界へと旅立つのだろうか
いつの間にか雪は止んでいた
君にも聞こえているのだろうか
ざわめく春の波音が