ポエム
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狂騒曲(長い夜)
 低く垂れ込めた雲が
 遠くの街灯りを映して
 辺り一面を赤輝色に染める夜

 考えてもしかたないことを
 やたら考えてしまう

 思考停止しているのに
 考え続けている

 答えがないと分かっているのに
 答えを探してしまう

 踏みにじられた答えは
 間違っていたからか
 弱かったからか

 あの赤々と燃え上がる
 巨大なイベント会場で
 連日連夜繰り広げられる
 熾烈なパイ投げ合戦では

 身を潜められる舞台裏など
 どこにもなくて

「人はヒトリでは生きていけない」
 と唱えながら
 たがいに近づきあっては
 たがいの顔面めがけて
 パイを投げつけあう

 楽しいはずのお祭り騒ぎ
 なのに 楽しめない

 打ち解けようとするならば
 打ち解けることもできるだろうに(?)

 パイを片手に
 笑顔で近づいてくる人たちが
 怖くてならない

 あれらはZombieだ
 きっと パイの中に仕込まれた
 何がしかの毒に侵されて
 ああなってしまったのだろう

 でも それなら
 あのパイの洗礼を
 何百回となく浴びた自分も
 とっくにZombieになっているはず

 …なっているのか!?

 まだ中学の頃 運動会で
 女子の騎馬戦に出場した
 長い黒髪の女ともだちが
 対戦相手の鉢巻を3本ぐらい
 奪っていて衝撃的だった

 自分だって
 家族でトランプの大富豪に興じ
 負けが込んで
 泣きそうになりながらも
 それにのめり込んだこともある

 でも だんだん
 勝利の美酒にも酔えなくなり
 いつしか 負けの苦杯にも
 何も感じなくなっていた

 戦場で
 戦意を喪失した兵士は
 撃ち殺され
 パーティー会場で
 しらけ顔の凡夫は
 嫌われる

 それだけのことだ

 それでも地球は回っている
 ガリレオの負け惜しみには
 まだ熱い情熱がこもっていた

 選民思想に酔えない凡人でも
 酔い痴れるほどの強い酒
 そんなのでもあったらな

 誰かの物語の
 くだらない役回りを
 押しつけられて
 それでも
 ヘラヘラ笑ってる

 夜半の空を仰ぎ見る

 真っ赤に染まるこの空は
 炎上し崩れ行く世界を
 祝福しているかのごとく
 美しく輝いている
22/06/04 20:19更新 / しそら



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