ポエム
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時の旅人
穏やかな川面に
晴れ渡った空が映って
青く輝く

暖かい風が優しく吹いて
桜の花びらが
はらはらと舞い踊る

かけがえのない人たちが
いつまでも変わらずいてくれることを
ただただ願う

大地にどっしりと根付いた木々たちは
自由に走り回る僕たちを
羨ましくも思うことがあるのだろうか

ふと思う
この生を 本当に
旅に喩えていいものかどうか

比喩が
ときに解放の翼となり
ときに呪縛の枷となることを
僕たちは知っている

人も 景色も
ときに足早に
ときにゆったりと
移ろいでいく

自分が立ち止まっていても
そのことは変わらない

時が流れていく
逆らうことのできない流れ

逃れることのできない
鬱陶しい旅

穏やかと思えた川面に
浮かべた笹舟は
ちょっとした波の威力で
意外にあっさり転覆し
小さな舟体は波に呑み込まれ
やがて見えなくなった

得体の知れない恐怖が
胸に込み上げてくる

消えてしまった!
笹舟が
海に憧れていたのに

見えなくなったけど
まだあの辺を流れているはずだ
いるはずなんだ

岸づたいに走り
流れに飛び込んで救うんだ
失いたくないんだ

おいおい そこの子ども
せっかく作った笹舟に
自分で石をぶつけて
沈没させるなんて

それにしても
なんて無邪気な笑顔

石を投げる
笹舟に当たる
沈没する
視界から消える

始まりと終わりの感慨もない
原因と結果 事実と現実が
タイの寺院の涅槃仏のように
ゆったりと寝そべっている

そして やんちゃな彼を
少し離れた場所から見守る
母親の優しい目

上空では 小鳥たちが
飛びながら囀っている
天敵の襲来か
それとも
ただの戯れか

突如 夢から覚めてゆくような
感覚に襲われる
自分は今 夢を見ているのか?

もし これが夢ならば
この夢から覚めたとき
自分はいったい何処にいるのだろう?

そして もし
これがすべて夢だったとしても
この夢があったという事実は
たとえ語り継ぐ者がいなくても
事実として永遠に残るのだろうか?

そもそも 残る って
どういうことなのだろう?

ものが 消えたり 残ったり
ことが 消えたり 残ったり
なんか 少し恐い
儚くて 悲しくて 愛しくて
そして やっぱり 少し恐い

誰かが言った
儚いからこそ追うんだって
夢見ることさえ愚かしい夢

終わらない物語の
幸せな結末を
22/05/10 06:48更新 / しそら



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