ポエム
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呑気ないのち
全身麻酔の手術が成功し
目覚めたときの嘆息

死にたがりが
生きたがりの
幻想を
頭から浴びせられ
ますます死にたくなる

人生楽しまなきゃ損
と話すあなたの
楽しさがわからない

目の前に
人参をぶら下げて
最期まで走り切る
それもひとつのスキル


朝起きて間もない
住処の手前の勾配で
足首をひねり
力なく転ぶ

若い頃には
転びながらでも
楽々制御できたはずの
体勢の感覚が
今朝はなにやら”もわ〜ん”と
曖昧にぼやけている

そして重力のなすがままに
抗うことなく優雅に転び
大地に手をついた

柔らかな転び方を
辛うじて選んだものの
「あのラオウが膝をついた!」
というほどの
かつての傲慢さは
僕の膝にはもう残っていなかった

いろいろなものが
失われていく
ひとつの命

すべての生命の
生き死にと
なんら変わらない
ひとつの命

哀愁という感覚は
あんがい気持ちがいいものだ

なんの”成果”も残さずに
果てていくだけの命

そこになにがしかの
幻想を求めることは
いいことですか?

「僕だって
 多少は何かをやりきった
 だからもうそろそろ
 いいでしょう?」
 という
 ”きりの良さ”

そんな諦念やら幻想やらが
これからの人類 一人一人を
支えていくのでしょうか

そこまで行くことができれば
もうじゅうぶん幸せなのでしょう

あなたにとって
ぼくは一体なんだったんですか

「そもそも あなたは誰?」
構造的に生まれ出づる問いかけ

審判不在で
永遠に保留され続ける問いかけ

その都度その都度
審判が現れては判定するけれど

新発売の缶ジュースのように
流通し消費される答え 答え 答え…

確かに
その都度 答えは出るのかもしれない
ただ その使い途が
あまりに局所的すぎるだけなのだろう
そして その賞味期限が
あまりに短すぎるだけなのだろう

厄介なことがらに
深入りしすぎないこと
泥沼を察知し 退避する知恵

でも
その 厄介なことがらでさえ
実は好きというなら しょうがない
その道なき道を進めよ

めずらしく 空が青い
長い梅雨も そろそろ終わりそうだ

噂によると
人類が良い方向に進んでいるらしいことは
どうやら確からしい

確かにね
僕のような
誰からも当てにされない存在が
あぁでもないこぅでもないと
呑気に考えあぐねては
もう半日も
こうして時間を潰しているわけだから

古代ローマの平和
そして 現代日本の平和

空が 青いよ
20/08/01 13:46更新 / しそら



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