ポエム
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静かな街
不謹慎だけど
静かな 今の
この街が好き

心臓病を黙殺し
当たり障りのない
穏便な終わりを
待ち焦がれている
最中だったけど

身体が与えられた
奴隷的役割を
果たせなくなり
ついに入院

手術は
運悪く成功
(運だけは
 相変わらず悪い)

僕なんかの命には
もらい手になる者さえ
未だ誰も見つからない

たとえ その誰かが
死神だったとしても

新型コロナウィルスに対する
首相の緊急事態宣言が4月7日 
入院が翌4月8日
手術が4月13日の午後
麻酔から目覚めたのが
4月14日の朝

経済的な困窮は
僕も みんなも
味わってるけど

でも やっぱり
不謹慎だけど

静かな 今の
この景色が好き

病院の6階の窓から
見下ろしてるだけ
なんだけれど

やっぱり
静かな 今の
この世界が好き

おかしい
おかしいって
ずっと思ってた

どうして あんなに
人は寄り添うのだろう

どうして あんなに
人は人を好きになるのだろう

そして どうして
そうじゃなくなるんだろうって

いつかきっと
みんなが好きな
あの賑やかな街は
戻ってくるんだろう

でも
僕はちょっぴり思うんだ

みんなの好きな雑踏が
帰ってきても

静かだった あのときの景色も
案外よかったなって
思い出す人が
いてくれることを



それと 今は夜だから
ちょっとだけ 僕の
本音を聴いてほしい

僕は
みんなの不幸は見たくない

でもそれは 僕が
みんなの不幸から
目を背けたいだけなんだ

結婚もしないくせに
遠目に若い娘を見て
元気をもらったり

見ず知らずの親子が
笑い合う姿を見て
その幸せを祈ったり

結局
他人の不幸までを
引っくるめて
背負い込もうとしない
いいとこ盗りの
卑怯で臆病な
闇夜の吸血鬼なんだ

面倒を掛けるんじゃねぇ
嫌なものを見せるんじゃねぇと
闇夜に吠える
下品で高慢ちきな吸血鬼なんだ

だから

お日さまの下では
自然と人間の姿に化けて

静かな 今の
この世界が好き

なんて嘯いている
僕を見つけたなら

そのときは
僕を殺していいよ
20/04/22 07:48更新 / しそら



談話室



■作者メッセージ
冷笑。
殺すほどの価値もなし。

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