旅する勇気
ブラスチック製のありふれたペン立て
半透明な白と青のツートンカラー
ペン立て君よ
思えば
君ももう二十歳はとっくに過ぎているんだよなぁ
アラビア半島あたりの地下で
数千年以上も眠っていたところを
近頃の人類に掘り当てられ
中国の工場で
窮屈な成型枠に嵌められ
大型船では
真っ暗な船倉に何日間も閉じ込められ
横浜港あたりで降ろされて
山間部の小さな町に建つ
百円ショップの冷たいスチール棚に並べられた
挙げ句の果て
そこで僕らは出会ったんだよなぁ
それから僕は何回かの引っ越しを経験し
その度に君も一緒に旅をした
でも
僕がこんなにも老け込んでしまったというのに
君はといえば
うっすらと埃らしいものを身に纏ってはいるものの
依然として出会った頃と同じ若々しいままだ
光を浴びると
君は相も変わらず
青く美しく透き通る
恐らく君のほうが
僕よりずっと長生きするのだろう
ん?
君はアラビアの地下で生まれたわけじゃないって?
その前は君は深い深い海の中を
エイッ、エイッて泳いでたの?
そしてその前は…
僕ら人類が
せめて平安な魂の永遠を
願わずにはいられないというのに
君にとって
永遠とは
ごくありふれた日常に過ぎないのか
もっといえば
僕らにとっては
死がそうであるように
君にとっては
永遠こそが
逃れることのできない宿命
ということなのか
考えてみれば
それはとても恐ろしいことだ
あり方を選べず
決して逃れることのできない
永遠なんて
僕ら人類は
何かに変わることが恐いから
ずっとこのままでいたいと
永遠を望んでしまう
でもそれは
その永遠は
君がまさに味わっている
永劫流転とは違う永遠なのだろう
所詮僕ら人類が憧れる永遠なんて
欲望の際限なき充足という
身勝手で偏狭な妄想に過ぎないのだから
いや
僕は決して
僕や僕の属する人類を
悪く言いたいんじゃないんだ
ただ僕は
君のように
旅する勇気を
持ち合わせてはいないんだ
…
そんなことはないさ
君にだってあるよ
旅する勇気が
君がそれを願い信じるならば
それはいつも
君とともにあるんだよ
ペン立ての僕と
人類の一員である君と
違いは一体何なのか
旅する勇気を思い出して
そして
旅する勇気を忘れないで
半透明な白と青のツートンカラー
ペン立て君よ
思えば
君ももう二十歳はとっくに過ぎているんだよなぁ
アラビア半島あたりの地下で
数千年以上も眠っていたところを
近頃の人類に掘り当てられ
中国の工場で
窮屈な成型枠に嵌められ
大型船では
真っ暗な船倉に何日間も閉じ込められ
横浜港あたりで降ろされて
山間部の小さな町に建つ
百円ショップの冷たいスチール棚に並べられた
挙げ句の果て
そこで僕らは出会ったんだよなぁ
それから僕は何回かの引っ越しを経験し
その度に君も一緒に旅をした
でも
僕がこんなにも老け込んでしまったというのに
君はといえば
うっすらと埃らしいものを身に纏ってはいるものの
依然として出会った頃と同じ若々しいままだ
光を浴びると
君は相も変わらず
青く美しく透き通る
恐らく君のほうが
僕よりずっと長生きするのだろう
ん?
君はアラビアの地下で生まれたわけじゃないって?
その前は君は深い深い海の中を
エイッ、エイッて泳いでたの?
そしてその前は…
僕ら人類が
せめて平安な魂の永遠を
願わずにはいられないというのに
君にとって
永遠とは
ごくありふれた日常に過ぎないのか
もっといえば
僕らにとっては
死がそうであるように
君にとっては
永遠こそが
逃れることのできない宿命
ということなのか
考えてみれば
それはとても恐ろしいことだ
あり方を選べず
決して逃れることのできない
永遠なんて
僕ら人類は
何かに変わることが恐いから
ずっとこのままでいたいと
永遠を望んでしまう
でもそれは
その永遠は
君がまさに味わっている
永劫流転とは違う永遠なのだろう
所詮僕ら人類が憧れる永遠なんて
欲望の際限なき充足という
身勝手で偏狭な妄想に過ぎないのだから
いや
僕は決して
僕や僕の属する人類を
悪く言いたいんじゃないんだ
ただ僕は
君のように
旅する勇気を
持ち合わせてはいないんだ
…
そんなことはないさ
君にだってあるよ
旅する勇気が
君がそれを願い信じるならば
それはいつも
君とともにあるんだよ
ペン立ての僕と
人類の一員である君と
違いは一体何なのか
旅する勇気を思い出して
そして
旅する勇気を忘れないで