蝶
ひらり、ひらり...
蝶がああも人を魅了するのは何故か。
それは美しさか。
それは可憐さか。
それは儚さか。
答えは否だ。
蝶の魅力は、もどかしさにある。
手が届きそうで、届かない。
捕まえられそうで、捕まえられない。
やっとの思いで捕まえたらば、
その美しさは消え失せる。
籠の中で日に日に弱り、
そして
やがて死んでゆく。
もどかしい。
なんてもどかしい生き物だろう。
手に入れようが、入れられまいが、
この生き物に向き合い続ける限り、
永遠に解放されることのない
もどかしさ。
それは積もり積もって、
人を狂気に貶める。
憧れが、
愛が、
執着に変わり、
憎しみに変わり、
やがて殺意に変わる。
蝶はその殺意を食べて生きる。
殺意を向けられて始めて、
今、まさに生きていることを知り、
その喜びに打ちひしがれながら、
羽に愛を込めて、美しく舞う。
ひらり、ひらり..
と。