味蕾に刻まれていた。
明日(あす)が来るみたいに言うんだね イヤな夢だよ
今があるみたいに約束するなよ イヤなヤツだな
口に入れてふわっと ちょっと甘酸っぱい あれは不器用な味
もう潰れた曲がり角の 君と通った駄菓子屋の
ちょっと怖いカオした優しいばあちゃんと
丸々太った赤トラの猫 エビフライみたいな尻尾生やしてさ
すぐ噛もうとしてきてさ それでも君には喉を鳴らしてさ
思い出したかな あのラムネの音
また行きたいな 固いグミみたいなの買っちゃってさ
君はコーラ味 おれはさくらんぼ
ちょっと勝気 おれは1粒もらって 2粒あげる
ホントは5粒くらいあげたかった
全部もらったような日々
そんなカンジで並んで帰る
待ち構えてる カーブミラー あの中に入ってみたい
そこに映らないかな 隣にいないことは知ってる
ワンちゃんが誰もいないところ見ててさ そこにいないことも知ってる
おれは食べ歩き 行儀悪いと怒ってくれよ
君は歩きながらペットボトルのジュースが飲めない
気付いたら影法師 あの時のまま オシャレなおかっぱ ボブカット?
そろそろ帰ろうか 掴めない手でもつないで
どこにもいないけれど もうお別れは済ませたけれど
会うことはもうないけど だっておれはまだここに留まりたくて
でも考えちゃうんだ 言わないけどね
夢の中でも 明日が来るみたいに 話すなよ
おれも歩きながら君の好きだったあんずのチューブが飲めないや
(2021.5.11)