波の向こう、夏の訪れ
夏がはじまる 腐っていく わたしの死体
蝉が泣く キシキシ鳴って わたしも喚く
帰ってくる 廻って 廻って 俗世が交わる あの世と 金で
線香が薫る 優雅に爆ぜて 運んでいって蝶よ蛾よ
この世に残す 小さな揺り籠 叩かれ消える うるさい命
散る 散る 花火よ 連れていけ
泳ぐ 泳ぐ 鯉よ 渡っていけ
昇っては煌めき 呆気なく 龍となったらお幸せ
昇っては輝き 悪気なく 罪に誘われ人となる
夏がはじまる 腐っていく わたしの希望が荒んで潰(つい)える
子供が泣いて 縄が軋む わたしは叫んで歌う
帰っていきたい 流れて 流れ 水が弾ける この世に留まる
洗剤が薫る 包まれていく 柔らかに撫ぜて 選んでいってコウノトリ
どこかで負けた白い戦友(トモダチ) 追われて抜かれて殺し合って
波の向こう 溶けていく燈火(ともしび) お別れはいらない 夏の訪れ 夏が終わる
秋が来るなら 蝉よ 蚊よ 爪痕は砂浜に呑まれて 一時の友よ
(2019.6.14)