空気も無く
存在制限のある　海の中は
私にとって
ささやかな　自由

息止めの力量では
僅か45秒の前後の　世界

儚い鼓動に　全てを託し
魚の様に　泳ぎ　潜る

その時　度々見かけるのが
魚が飛び跳ねる光景

自由を求める私とは　反対に
魚も自ら
こちら側の世界に　飛び込んで来る

トビウオは胃を失い
ヒレを羽に模してまで
私達の世界に飛び跳ね　逃げて来る

魚達にとっては　こちら側が　「海」

私と同じで　ずっと居られない…

存在を許されない　世界に

何を感じて　何を求めて　命をかけてまで

刹那のダイブを　繰り返すのか

お互い　許された季節に

許された　瞬間の時を　何度も　何度も…



　　　　　　2019詩 ー海人の羽ー

海の中は自由だと
伝説のダイバー
ジャック・マイヨールは言った
私も　その一人

自分の力量は僅か45秒前後
素潜りもスキューバも
制限のある世界に変わりはない

魚は何を思って
こちら側に飛び込むのだろうか？

胃を失っても魚のままの　トビウオ
ヒレは羽を模し
鳥に成り損ねた様

冬の海にボラが跳ねた
パチャン　ボチャンと　空へ瞬く影

私も春
再び彼等の世界へ
命を羽ばたかせに行く

■作者メッセージ
空中での捕食　敵から逃げる　寄生虫を落とす、など
諸説あります。　(ボラ)魚が跳ねるなどの理由は
生物学的には今だに明確な理由は定かではないようです。