トランプを一枚一枚　三角形にして
その上にまた数枚置いて　下から段になる様に並べた
壊れない様に　崩さない様に
私の心臓の音が指の先まで鳴り響く
　ピラミッドみたいに上手くいかないと思うけど
　小さな私だけの山が出来る
　一段目　二段目　三段目・・・
　トランプの数が徐々に少なくなって
　痺れてくる指先
目も痛くなる程　赤くなって霞んで見えてくる
だけど何故か手が器用に動く
山を作るんだ・・・私だけの・・・
私はそれに命を吹き込んだ
必ず出来る　崩れてたまるものか
単なる紙切れであるトランプにムキになっている
あとどれだけトランプを重ねたら
山が完璧に出来るのだろう
息苦しくなって深呼吸に気を遣う
　手の痺れも忘れた頃になると
　あと二段目で山の頂が完成する所に至った
　あと数分で山が出来る　そしてその時がやってきた
　あと二枚　三角にして出来上がり
　まるで城にも見える程　勇ましく聳え立つ山の形
　それは思いを全うした私の姿　なのにとても崩れやすい
　私が思わずほっとして溜息ついたら
　一瞬で崩れていったトランプの山
　あの勇ましい姿の影も失くなって　もう一度それを作るか作らないか
　時を弄んでいる私

■作者メッセージ
たくさんのトランプを使って山になるように作り始めると、いつの間に我を忘れたように夢中になってる自分がいる。とてもやめるにやめれない程に集中力が高まり熱くなってくる様子を詩にしました。結局最後にはあっという間に作り上げたトランプの山は崩れたけど、作り上げたという達成感・充実感はまだ心に余韻として残って主人公の気を紛らしているから決してネガティブに描かれていません。