ポエム
[TOP]
ペトリコール
改札を抜けた向こうで
君はもう 笑っていた
指先で髪を整えながら
「そんな顔しないでよ」と軽く言う

強がる声に 滲むものがあって
僕は気付かないふりをした
それが 最後の優しさだと思ったから

かける言葉もなくて 目も合わせられず
遠ざかる足音だけが空白を埋めていた

「じゃあ 元気で」
それはたぶん 僕の方のセリフだった

少しだけ離れた距離で
振り向いた君に
小さく手を上げることが精いっぱいだった

君の姿が見えなくなって
ようやく時が流れ出した

外に出て深い溜息を吐く
仰いだ空は重たく 湿っている

この匂い...
じきに降ってくるだろう
25/05/28 21:08更新 / Xiu



談話室

TOP | 感想 | メール登録


まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.35c