ポエム
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通報現場
車道に寝転んでいる老婆がいて
車を停めて声をかけると
本当は轢かれる前に動けなくなりたくて

結果としてうまくいかなかったから
血を流しているのに退避できず
会話をすることになったという状況らしい

ゴミを避けるために車線変更をして
前に続く予定だったが
直前に人だと気づいて

たまたま現れたぼくは
迷惑なのか

わからなかった

意識は明確だが
やりきれない思いからか茫然とした雰囲気もあり
選んだ場所といい
どこか本来は迷いもあったのか
整理がつかない様子だ

しかし
このまま放置もできず通報を済ませ警備をしながら救助を待とうとすると
この段階になった途端続いてくるオジサンが現れて

大げさに警備に参加してくるのだが
まるでぼくには早く立ち去ってほしいようだった
一方的に
もう行っていいよ とは
随分な物言いだ
(おまえはぼくが止まっていなければ無視してただろうに)

同じような構図で
この展開になるのは経験が知っている気がするから
どうということはないが

一見親切そうな様子が
エンジンオイルをまとって抱きつかれるような
不愉快さに変換されることに変わりはない

(分かる人には分かる鬱陶しさがわずらわしい)

なにより
この間の老婆の心境は
安堵とも怒りとも違うものだっただろう

(もしかすると?)

ぼくも急いでいたのなら
意図的にあるいはやむなく素通りしたであろう現場で
長い時間に思えた冷たい たぶん数分の間
ぼくの声に老婆は頷いていたが
警察車両と救急車両が到着しても表情を変えることはなく
質問を受けて淡々と「絶ちたかった」主旨の発言をする老婆を
警察官が怒鳴るように叱りつけていた

その怒鳴り声で
一緒に救われる思いだったことは言うまでもない
25/05/10 01:57更新 / hinoki no bou



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