離れ小島
人里離れた山の奥
かつては水田だったと思われる
一帯の途中にある浮島
浮島とは言っても
現在は見えている範囲の全域を歩けるのだが
第一印象の高揚感から
勝手に離れ小島と呼んでいる所にある
訪ねてきたのは
どうやら
見憶えのある老夫婦の家
誰かはわからないけど
いつか会ったことがあるよね
知っている確信は一緒だから
まったく躊躇はなかった
やさしい笑みで迎え入れてくれた玄関の奥には
一箇所だけ異質な柱
神殿にありそうな
控えめな銀に
散りばめられた翠色の飾り
左側には油時計が内蔵された水槽
ああ
目の前にくると懐かしい
前に来たのは
子供のときだったはずだ
相変わらず家に入ると
外の景色が変わるね
さっきまで塀なんか見えなかったのに
柱の近くからだけ見える
青々とした葉っぱの植物も
一枚一枚が大きい
室内の全景を眺めながら
やすらぎの拠点を確認できる要素ばかり
陽炎を追いかけるように
何度も同じ映画を観て
その都度違う感想を述べていた
しかし奇しくも
離れ小島の周りまではどうやって来たのか
たぶん見え方が毎回異なるし
戻り方すらはっきりしないのに
「また来たいけど
うまく来られるかはわからない」とは
憶えていて
「また来る気がする」のが困りものなんだ
来た時のことは
何も心配していないから
この映画の結末についても
分かるようにしておいてくれ
そう言うと老夫婦は
やはり柔和な笑みを浮かべてうなずいていた
ゆっくりと反転をはじめる
水槽の油時計
…?
どちらにしろ
戻る時間が近くなってきたのか
素性は気にならない
そもそもどちらも気にしていない
ただ今回は
それを憶えて戻れそうだから
できれば早く来たい
用もなく続きを見つけるために
それじゃあ
また行くからね
かつては水田だったと思われる
一帯の途中にある浮島
浮島とは言っても
現在は見えている範囲の全域を歩けるのだが
第一印象の高揚感から
勝手に離れ小島と呼んでいる所にある
訪ねてきたのは
どうやら
見憶えのある老夫婦の家
誰かはわからないけど
いつか会ったことがあるよね
知っている確信は一緒だから
まったく躊躇はなかった
やさしい笑みで迎え入れてくれた玄関の奥には
一箇所だけ異質な柱
神殿にありそうな
控えめな銀に
散りばめられた翠色の飾り
左側には油時計が内蔵された水槽
ああ
目の前にくると懐かしい
前に来たのは
子供のときだったはずだ
相変わらず家に入ると
外の景色が変わるね
さっきまで塀なんか見えなかったのに
柱の近くからだけ見える
青々とした葉っぱの植物も
一枚一枚が大きい
室内の全景を眺めながら
やすらぎの拠点を確認できる要素ばかり
陽炎を追いかけるように
何度も同じ映画を観て
その都度違う感想を述べていた
しかし奇しくも
離れ小島の周りまではどうやって来たのか
たぶん見え方が毎回異なるし
戻り方すらはっきりしないのに
「また来たいけど
うまく来られるかはわからない」とは
憶えていて
「また来る気がする」のが困りものなんだ
来た時のことは
何も心配していないから
この映画の結末についても
分かるようにしておいてくれ
そう言うと老夫婦は
やはり柔和な笑みを浮かべてうなずいていた
ゆっくりと反転をはじめる
水槽の油時計
…?
どちらにしろ
戻る時間が近くなってきたのか
素性は気にならない
そもそもどちらも気にしていない
ただ今回は
それを憶えて戻れそうだから
できれば早く来たい
用もなく続きを見つけるために
それじゃあ
また行くからね