ポエム
[TOP]
香花は幸せを告げる
冷えた花茶は揺れながら
喉の奥へ滑り落ちる
そこに既に居なくても
鼻と口とに落とした香りは
初夏風のように私を染め上げた

既に君は居ないのに
それでも残る蘇る君の香り
不思議だね と呟くと
幸せでしょう? と言葉が返る

だって何度も思い出せるのだもの
悪戯っ子のように笑うのは
胸へと落ちていった花茶香

そうね そうね
私は瞳を閉じる
何度も思い出せるのは幸せね

たとえそれが苦くても
たとえ涙が滲んできたとしても
居ない何かを感じられる思い出せる
それは自分がここに居るということ
花茶を飲む自分が居るということ

それだけで幸せなはず
なのにね

涙に乗った小さな言葉に
返る声は無かった

あの香りはもう体内を巡ってしまったのだろうか
20/11/25 08:39更新 / ねこK・T



談話室



■作者メッセージ
―― ジャスミン「満ち足りた幸福」

「回遊魚」様(現在は閉鎖)の「香る花五題」を元に。

TOP | 感想 | メール登録


まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.35c