行くあてもない
ある日、病院で老婆を見かけた。
入院患者なのだろう、皺の寄った寝間着を着て椅子の上で縮んでいた。
小さく彼女は「キョウコちゃん?」と繰り返し
やがて子供のように泣き喚いた。
看護師は剥がれかけた愛想で彼女を連れ去っていった。
私は去年亡くした祖母を思い出した。
重度のアルツハイマーだった。
既に無い畜舎の中で彼女は牛を世話していた。
それからまもなく軽くなった。
私は彼女の家の跡地を訪れた。
砂利道は腰よりも高い草で覆われて
そこにあったはずの生活なんて何処にも無くて
無論、畜舎なんてものも無かった。
キョウコちゃん、と心の中で呟いてみた。
やはり理不尽な気持ちがした。
入院患者なのだろう、皺の寄った寝間着を着て椅子の上で縮んでいた。
小さく彼女は「キョウコちゃん?」と繰り返し
やがて子供のように泣き喚いた。
看護師は剥がれかけた愛想で彼女を連れ去っていった。
私は去年亡くした祖母を思い出した。
重度のアルツハイマーだった。
既に無い畜舎の中で彼女は牛を世話していた。
それからまもなく軽くなった。
私は彼女の家の跡地を訪れた。
砂利道は腰よりも高い草で覆われて
そこにあったはずの生活なんて何処にも無くて
無論、畜舎なんてものも無かった。
キョウコちゃん、と心の中で呟いてみた。
やはり理不尽な気持ちがした。
18/04/24 14:55更新 / とり