ポエム
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行くあてもない
ある日、病院で老婆を見かけた。
入院患者なのだろう、皺の寄った寝間着を着て椅子の上で縮んでいた。
小さく彼女は「キョウコちゃん?」と繰り返し
やがて子供のように泣き喚いた。
看護師は剥がれかけた愛想で彼女を連れ去っていった。
私は去年亡くした祖母を思い出した。
重度のアルツハイマーだった。
既に無い畜舎の中で彼女は牛を世話していた。
それからまもなく軽くなった。
私は彼女の家の跡地を訪れた。
砂利道は腰よりも高い草で覆われて
そこにあったはずの生活なんて何処にも無くて
無論、畜舎なんてものも無かった。
キョウコちゃん、と心の中で呟いてみた。
やはり理不尽な気持ちがした。
18/04/24 14:55更新 / とり



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