どこかの街の政治家が｢僕｣見下ろして言っていた

｢努力こそが人間の美徳である｣と

だから｢僕｣はそいつを見上げて言ってやった

ふざけるな。誰がお前の作る社会ためなんかに努力してやるものか

高校の教師が机を叩いて言っていた

｢目標を立てることこそが重要だ｣と

だから｢僕｣はそいつを睨んで言ってやった

紙の上でしか人を見ることが出来ないお前に｢僕｣の何がわかるんだ

映画の中のヒーローが誇らしげに言っていた

｢自己犠牲こそが本質だ｣と

だから｢僕｣はそいつを羨んで言ってやった

ふざけるな。誰が知りもしない誰かのために犠牲になってやるものか

鏡の中の｢努力｣も｢目標｣もない｢自己中心的｣な誰かが僕を嗤って言っていた

｢俺はお前だ。｣と

だから｢僕｣はとびきりの嘲笑と感謝を持って言ってやった

ふざけるな。誰がお前になってやるものかw

きっと全てに意味があって、｢誰か｣ではなく｢僕｣の為のものなのだ

そう思いながら｢僕｣は、6畳1間のアパートの重い重い扉を開く。

なんだ。｢僕｣が心配しなくても

とても明るい世界じゃないか


咎人

■作者メッセージ
｢誰か｣に教えてやって欲しい。