ポエム
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ウクライナよ  〜〜 生きて、生きて、生きてください 〜〜
ウクライナよ  〜〜 生きて、生きて、生きてください 〜〜      
トモ

君は知らないかもしれない。
この日の夜明け前の東の空に、クレセントムーン(三日月)が悲しそうにたたずみ、すぐそばで、ヴィーナス(金星)が怒ったような輝きをしていたことを。

この日、お日さまが昇ると、空からけたまましい音がして、地上で爆発した。
戦車が国境を越えて、やってきた。
No War!
世界中が叫んでも、飛弾とキャタピラは乗り込んできた。

一か月たった。
積みあがったのは、悲鳴と怒り。
そして、公園のお墓だ。
私たちは、公園が何のためにあるかを知っている。
でも、君が知っている意味は違う。
もちろん君は、公園で、子供たちが遊び、母親たちが語り、恋人たちが腕を組んで散策し、家族が楽しんでいる風景を知っている。
でも、君は、もう一つの風景も知っている。
公園に人がいなくなり、緑がなくなり、いつのまにか、そこに知り合いが穴を掘っていた。
悲しいことだが、この穴の意味も、君は知っている。

ウクライナの君よ。
私にできることはなんだろう。
かつて秋津洲と呼ばれた國の東北に住む詩人は、
『雨ニモマケズ 風ニモマケズ』
と歌った。

雨なら、傘を差し、帽子をかぶれば、なんとかなる。
風なら、向かい風に向かい、足を踏ん張れば、なんとかなるかもしれない。
でも、この地に降る飛弾は、ふさぐことができない。
傘を差しても、足を踏ん張っても、ふせぐことができない。
ウクライナの君よ。私にできることはなんだろう。

でも、私たちは知っている。
雨も風もやがてやむ。
そして、飛弾もやむ。飛弾は、雨や風と違って、無尽蔵ではないからだ。

やがて、公園に人々が戻ってくる。
ムーンは、クレセントから一度、ブラックになり、ギボアスムーンになり、フルムーンになって、輝いていく。
お墓に眠る人々は、私たちに生きる力をくれる。
君は、生きるために、生きていくのだ。
そして、君は、希望のヴィーナスになるのだ。

私にできないことでも、君にはできることがある。
君は語ることができる。
いまの風景を生きていくことが、なにかをを語ってくれる。
そう。月が、ヴィーナスが、何も言わずに語ってくれてるように。
未来に生きていく人たちは、そんな君をみて、
何かを感じ、何かを考え、何をつかんでくれるはずだ。
ヴィーナスの君よ。
生きて、生きて、生きてください。
公園の お墓に眠る人たちの分までも生きてください。。
そして、語りべとして、こんな時代があったことを伝えてください。

私たちは知っている。
生きることで、明日があることを。
22/04/02 08:36更新 / 城崎 トモ



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