ポエム
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凧揚げ
凧を引いている。
一人の子供が凧を引いている。
いや、一人ではない。
二人、三人、四人、五人、もっとだ、十人の子供が、みんなで同じ凧を引いている。
凧からはいくつもの糸がぶら下がっていて、その糸の端を手首に巻きつけて、みんなで。
――あれは本当に凧なのだろうか。
帽子を被っている。その下に体がぶら下がっている。狐の毛皮のコートを着ている。
――あれは凧ではない、人間だ!人間の屍だ!
屍が空へと昇り始めた。
糸で繋がった子どもたちの足が、地面から一センチ、二センチと離れていく。
糸を解こうと思っても解けない。
――これは呪いだ、あの屍の呪いだ!
お母さんたち、子どものお母さんたちが、ナメクジの睨めっ子のような顔をして走ってくる。
しかしいつまでも、子どもたちに辿り着かない。
走っても走っても、手が届かない。
屍はぐんぐんと空へ昇っていく。
子どもたちにはもう誰も、手が届かない。
――あの顔を見給え、みんな魂が抜けたような顔をして、口を開いている。目からは光が消え、まるで潰れた銀杏のようじゃあないか!
24/10/17 00:48更新 / たろう



談話室



■作者メッセージ
失恋の苦しみを象徴的に表現した詩です。誰もが始めはときめく恋(凧揚げ)。失恋で死んでしまった恋心と、それに伴って腐っていく健全な心を、屍と子供に仮託しています。

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