ポエム
[TOP]
不発弾
僕が海でガンガゼに足を刺された時、僕の片足は大きく腫れました。
膝から下が象の足のように膨れ上がり、血が通っていないかのように真っ青になったのです。
その時分に、近くに僕の大切な人がいました。
彼女は人の失敗を最後には赦す、誰よりも優しい心をもった人でした。
彼女は僕の膨れた足を見て驚き、愛のこもった手で患部に触れました。

僕の人生が狂ったのはその時です。
僕の心が不発弾となったのもその時です。

彼女がトンカチのような僕の足に触れた瞬間、僕はその足で彼女を一心不乱に殴りつけていました。
海に遊びに来ていた周りの人たちが僕を止めにかかりましたが、誰も僕の足を止めることはできませんでした。
足は彼女の顔を痣だらけにし、腕の骨を折り、両足で立つことを禁じました。
僕はその間、意識が飛んでいたのではありませんでした。
足だけが呪いにかかったかのように、大切な人を殴りつけていたのです。

僕の足はいつ止まったか――?
その時は、彼女の口から心臓が飛び出した時、つまり、僕は彼女を一度殺しているのです。

(後に彼女の両親が高額な治療費を払い、優秀な外科医に心臓を元の位置に戻してもらっています)

それから五年が過ぎた今、僕はどうしているか――。
精神障害者手帳の二級を渡され、罰されることもなく、年金をもらって健やかに生きています。
いつ爆発するかわからない心を抱えて。
24/10/16 00:02更新 / たろう



談話室



■作者メッセージ
怒りに囚われ、大切な人を精神的に追い込んでしまったあの日の記憶。どうやったって僕が許される日は来なくて。

TOP | 感想 | メール登録


まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.35c