ポエム
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開花
郵便ポストの赤々した箱は
僕の恐ろしい罪を閉じ込めて
あなたへの恋を形にした手紙を
真っ黒な舌の付いた口で飲み込む

凍えるような寒さの中
僕はトレーナー一枚で街を歩き
今まで犯してきた罪の一つひとつが肌に突き刺さる
震える体はあなたの温もりを求めて

信号の赤と緑
明滅するタクシーのヘッドライト
灯っては消えるあなたの笑った顔

生まれたことが間違いだったんだ
あの夜に死ねなったことを悔やむ日々はいつまで続くのか
その終わりを示してくれたのが
紛れもないあなただった

街道に沿って立ち並ぶソメイヨシノのミイラ
輝かな日々は一斉に死んでしまった
輝かな日々とはつまり――
僕という個性をまだ知らなかった日々のこと

大型トラックが徐行しながら道を往く
自分を知った日から
僕の人生もナメクジのように漸進するのみ
身に纏わりついたこの陰鬱を消してしまいたい!

僕の過ちが過ちである限り
生きていることは不幸なままだろう
しかしあなたの中の僕が正であるならば
僕の息吹きは間違いではなかった――
前へ進んでいくことが轍となるなら
この轍をあなたへと繋げよう。

暗い公園の遊具が
色とりどりに塗られた遊具が
僕のこれからの未来に見える
鮮やかな個性の開花に見える
24/10/13 16:59更新 / たろう



談話室



■作者メッセージ
数えきれないほどの罪を背負った僕が、前に進むための詩。泥沼の中から、這い上がるための詩。

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