ポエム
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続いてきたもの
ある家の小さな庭に、春を呼ぶ風が吹いた。
しなやかな草たちはさらさらと風になびき、
銀色に輝くその様は美しかった。
しかし、その中に一本の醜い茎を持つ、せいたかのっぽの菜の花が生えていた。
その茎はあちこちがガコガコ屈曲しており、茎の内側には幾重にも渡る層があった。
そのせいか、とても硬くて頑丈だった。
庭の秩序には邪魔だからと、何人かの人が刈り取ろうとしてやってきた。
彼らは決まって、持参のハサミで力を加えた。
一層、また一層、と、菜の花の茎は壊れていった。
しかし、どれだけやっても、中心に通る芯だけは、到底誰にも切り取れなかった。
ある者が覗きこむと、その芯は濁った金色をしていた。
結局誰も菜の花を刈り取れず、今日も一本、醜く庭に生えていた。
菜の花の茎には、いくつもの傷が残り、風に吹かれるとその傷は痛んだ。
24/05/10 12:24更新 / たろう



談話室



■作者メッセージ
 菜の花は、僕のことです。この詩は、いくつもの自分を試し、自分を変えながら生きてきた、分断される僕の人生のなかでも、ずっと変わらない性質もあったのではないか、という内容の詩です。変わらない性質とは、僕のまっすぐで素直な部分です。だからこそ傷つきやすいですが、その部分を好きになってくれる友達が何人かいます。
 大きくなってから、傷つくことがたくさんありました。いろいろな自分を剥ぎ取っていきました。今の僕は、素直さを活かした自分であり、一番しっくりする自分です。

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