理想
木の陰からずっと、丸々太った虎が、僕を視ている。
しかし僕は、それに気づかない。
虎の内臓は、音を立てて燃えているというのに。
ギラギラと底光りする虎の目は、紫色をしていて、新緑のなかトパーズが光っているような。
虎のよだれが、土を這う草に垂れて、じゅわっと蒸発した。
いっぽう僕は草のうえに寝転んだりして、この危機のしっぽも見えていなかった。
僕は大きな欠伸をして、寝返りを打って横向きになった。
その瞬間、虎が空気を斬って走り出した。
あっという間に僕に食らいつき、腹から、足、腕、そして脳髄にかぶり付いた。
しかし僕の体からは、血が流れなかった。それどころか、僕の体に付いていた肉はすべて発泡スチロールでできていて、虎の栄養にはなり得なかった。
また、僕の肉はすこぶる不味かった。
僕は死んだ。
けれども僕を襲った虎の胃袋には、いつまでもいつまでも、天使の白い垢が残るだろう。
しかし僕は、それに気づかない。
虎の内臓は、音を立てて燃えているというのに。
ギラギラと底光りする虎の目は、紫色をしていて、新緑のなかトパーズが光っているような。
虎のよだれが、土を這う草に垂れて、じゅわっと蒸発した。
いっぽう僕は草のうえに寝転んだりして、この危機のしっぽも見えていなかった。
僕は大きな欠伸をして、寝返りを打って横向きになった。
その瞬間、虎が空気を斬って走り出した。
あっという間に僕に食らいつき、腹から、足、腕、そして脳髄にかぶり付いた。
しかし僕の体からは、血が流れなかった。それどころか、僕の体に付いていた肉はすべて発泡スチロールでできていて、虎の栄養にはなり得なかった。
また、僕の肉はすこぶる不味かった。
僕は死んだ。
けれども僕を襲った虎の胃袋には、いつまでもいつまでも、天使の白い垢が残るだろう。