ポエム
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僕の体にはいつからか、
一匹の虫が住みついていた。
そいつは僕の心を蝕み、
脳みそを食らって生きていた。

酷い発熱をしたときのように
体に青あざができたときのように
僕は明らかな異変に、
もっとずっと前から気づいていた。

そいつはいつも僕の頭を、
せわしくせわしく働かせた。
ここにいるようでここにいない
一点をみつめているようでみつめていない
僕は必死に戦っていた。

僕の息をする場所すべてが、
戦場だった。

けれど、虫はある日突然、
僕の中から姿を消した。
僕の体はことごとくに荒廃していた
僕はその日から、
しばらく動けなかった。

庭にフキノトウの花が咲いた頃、
僕はようやく起き上がった
あなたが買ってくれた、
お菓子箱のなかのクッキーを食べた

僕が久しぶりに破顔した時、
あなたは初めて笑ったような顔で、
たまご色の光を灯した
こうして僕の、冬が終わった。
23/08/04 01:52更新 / たろう



談話室



■作者メッセージ
虫を何と読むかは、読者の方の解釈に委ねようと思います。
僕は人生を通して、この虫と戦ってきました。

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