虫
僕の体にはいつからか、
一匹の虫が住みついていた。
そいつは僕の心を蝕み、
脳みそを食らって生きていた。
酷い発熱をしたときのように
体に青あざができたときのように
僕は明らかな異変に、
もっとずっと前から気づいていた。
そいつはいつも僕の頭を、
せわしくせわしく働かせた。
ここにいるようでここにいない
一点をみつめているようでみつめていない
僕は必死に戦っていた。
僕の息をする場所すべてが、
戦場だった。
けれど、虫はある日突然、
僕の中から姿を消した。
僕の体はことごとくに荒廃していた
僕はその日から、
しばらく動けなかった。
庭にフキノトウの花が咲いた頃、
僕はようやく起き上がった
あなたが買ってくれた、
お菓子箱のなかのクッキーを食べた
僕が久しぶりに破顔した時、
あなたは初めて笑ったような顔で、
たまご色の光を灯した
こうして僕の、冬が終わった。
一匹の虫が住みついていた。
そいつは僕の心を蝕み、
脳みそを食らって生きていた。
酷い発熱をしたときのように
体に青あざができたときのように
僕は明らかな異変に、
もっとずっと前から気づいていた。
そいつはいつも僕の頭を、
せわしくせわしく働かせた。
ここにいるようでここにいない
一点をみつめているようでみつめていない
僕は必死に戦っていた。
僕の息をする場所すべてが、
戦場だった。
けれど、虫はある日突然、
僕の中から姿を消した。
僕の体はことごとくに荒廃していた
僕はその日から、
しばらく動けなかった。
庭にフキノトウの花が咲いた頃、
僕はようやく起き上がった
あなたが買ってくれた、
お菓子箱のなかのクッキーを食べた
僕が久しぶりに破顔した時、
あなたは初めて笑ったような顔で、
たまご色の光を灯した
こうして僕の、冬が終わった。