家族の仕事
父は会社を辞めて
小さな薬局を経営していた
母は近くの
ガソリンスタンドで働いていた
僕が社会に出る頃には
薬局もガソリンスタンドもなくなって
父と母だけが残った
僕の仕事は
壊れた信号機を修理することだった
五百基目の信号を修理している時
今の妻と出会った
妻は星を見るのが仕事だった
仕事の手伝いで
一緒に星を見る夜もあった
やがて結婚して娘が産まれた
赤ちゃんは泣くことが仕事、
と妻は言った
どんなに泣いても
一生分を泣ききれなかった娘は
大きくなっても
泣くことがあった