濡れタオル屋
水に濡れたまま
雨にうたれている
妻が傘の中からタオルをくれる
いくら拭いても
濡れタオルだけが増えていく
妻は可愛い人
こんな時でも傘には入れてくれない
濡れタオル屋でもやろうかな
と言うと
それじゃあ私はタオル渡し係
と答えるから尚更可愛い
いつまでたっても
雨にうたれるのは下手糞なのに
濡れタオルを作るのは
上手になっていく
それでも可愛い妻は傘に入れてくれない
生地の無い傘に入れても
僕が傷つくだけだと知っているから
また一枚
妻が濡れタオルを差し出す
水に濡れながら涙をこらえている妻は
ほんのりと色気すらある