履歴書
扇風機から炭酸水が漏れている
甘い味はなにもないのに
蟻が数匹集まっている
手触りのする布で拭いて
以前から繰り返していた
冷蔵庫を開ける
三丁目がある
良く冷えた救急車が
大通りを走り抜けていく
父も母も知らないうちに
兄はある朝
ベジタリアンになっていた
バターの隣から取り出した様式に
水の履歴を書いていく
近づけるところがあれば
近づきたかった
最後に父が乗った救急車は
夕焼けの中を
美しいシルエットで走って行った
やがて順番に
誰も帰ってこなくなった
履歴の最後に
今日の日付そして炭酸水、と書く
しばらくして
夜
と一行書き加える
雨のように筆談が始まる