ポエム
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名札
 
 
霊安室に母が椅子を並べている
「みんな死んだのよ」
いつこの仕事に就いたのだろう
死んだ体を扱うように
丁寧な手つきで並べていく
手伝おうとすると
「いいのよ、毎日、お仕事、大変でしょう」
と言う
父のことを聞くと
「最初からいないでしょう」
俯いて答える
そんなはずはないと思い
父の特徴を思いだそうとするけれど
すべてが椅子の特徴になってしまう
遊園地にも三人で行ったはずなのに
母と二人で椅子に座ったことしか
もう思いだせない
乾いた木と金属の音が室内に響く
「あなたは人だから」と呟いて
母は下を向いたまま椅子を並べ続ける
胸につけた名札が揺れる
一字違いで花の名前になれない
母は昔からそういう人だった

23/07/26 07:05更新 / たけだたもつ



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