川のある街
白い形の声が落ちていた
門扉が壊れて困る、という
間違い電話だった
切ることもできず
わたしはイトヨリダイ
だったと思う
そのような体をして
傾聴した
暑くて
素麺のお裾分けが嬉しかった
性病の名前をいくつ言えるか
夏のある日に競い合った
象が好きな人だったけれど
象の飼育員にはなれなかった
わたしは出来ないことばかりが増えて
結局一度も
素麺の話をしたことはなかった
間違い電話は切れることなく
門扉に白く薄く季節の言葉が
継ぎ足されていく
例えば大きな川が流れていて
川とともに生活がある
そんな街に生まれていたら
生き方も考え方も違っていて
象の飼育員にはもう少し
色や匂いがあったと思う
三年掛かって
消えていく儚いもののように
間違い電話は切れた