ポエム
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残り香


ただ、青くて
細く収束する顎の形
幼い紙質の上に
設計図面を描くといつも
自動扉のところで
ふと途絶えてしまう

お昼の休憩中
遷都のようなものがあった
街のいたるところから
人はいなくなり
声のように漂っていた無数の
ミズクラゲたちも
姿を消した

すれ違う乗務員の背中に
蝉の欠片がしがみついている
それとよく似た光景は
わたしがいた居住地でも
見慣れたものの
悲しいひとつだった

時々、車窓に溺れている
わたしを見つけることがある
逃してあげたくて
窓を開けると
ほのかに潮の香りがする
かつてこのあたりにも
それなりに大きい
海があった

25/02/03 05:19更新 / たけだたもつ



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