ポエム
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もち


もちを食べていたら
中から
ラケット二本と
シャトルが一つでてきた

正月は羽子板だよね
とか言いながら
僕らはいつまでも
バトミントンをし続けた

あの日
何回まで数えることが
できたのだろう

ただの退屈だ、と
誰にも
笑われることなく







もちを食べていたら
中から「もちの精」がでてきた
願いごとをいくつか
かなえろ
と言う

何故さ!
つっこむ間もなく
「もちの精」は勝手に願いごとを言う
とてもじゃないけどかなえられそうにもないし
期限があるわけでもないらしいので
放っておくことにする

友人に出した年賀状が一通
あて先不明で返送されてきた
元気でやってます
伝えたいのはそれだけだった







もちを食べていたら
自分がもちであることに気づいた
さっきまで同じパックに入っていた仲間を
ごめんよ、ごめんよ
と言いながら涙を流して食べている

もちがもちを食べるものだから
ぐちゃぐちゃに
くっついて
ひっついて
からみついて
どこからどこまでが自分なのかわからなくなる

そんな僕を君が食べている
ごめんなさい、ごめんなさい
って







もちも美味しいと感じるのは元旦くらいで
二日には白いご飯と味噌汁が恋しくなる
箸休めにここで一曲歌うことにする
けれど、その歌を耳で聴くことはできないだろう
だって
歌はいつも
心で聴くものだから







もちを食べる
中からは
ラケットも
シャトルも
「もちの精」も
出てくることはない
ましてや
僕はもちではないし
君も僕を食べたりはしない
そんな当たり前のことを幸せに感じるのは
一年のうちでも正月だけかもしれない
と、当たり前に思う

それから買っておいたラケットとシャトルで
君とバドミントンをする
数える必要はない
僕らが日々願うことなんて
たかが知れてる

25/01/02 11:20更新 / たけだたもつ



談話室

■作者メッセージ
今年もよろしくお願いします

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