架空請求書
壊れかけた百葉箱の中で眠っている
僕の架空の妹
いろいろと短いのに産まれた順番だけで
長女になってしまった
安心して眠れるように
頭を撫でてあげるけれど
架空だから忘れられていくものがある
食卓には夕食が並んでいる、並べられている
並べているのは僕の実の兄
長男だから長い
その一方で短い所も散見される
父はだらしなく座り
身体のほつれた箇所を繕っている
その度に、はあ、はあ、と
呼吸のような独り言が唇から洩れている
だからいつしか僕の口癖も
はあ、はあ、となった
明日はお出かけよ、母がキッチンから言う
皆んな嬉しそうに明日のお出かけを思う
お出かけの前の晩は
いつまでこうしていられるんだろう
と計算しながらベッドに入る
朝、目覚めると僕自身が架空だから
何か一部分がない時がある
もしくは何ひとつとしてない時がある
身に覚えのない金額が書かれた請求書が
風に吹かれて飛んでいく
やがてどこかの海に落ちるのだろう