アクロスティック詩群「飛行機雲」
飛行機雲がかかっている
港湾事務所のひび割れた窓の外に
海はすでに手続きを済ませ
気体との区別を曖昧にし始めている
偶然という言葉だけでは
もう生きていけない
。
必然が家々の屋根に降り積もるころ
子どもたちは睡眠の中を生きる
失うことも
傷つくこともない
ぐずついた空だけが夢の中に広がり
模型飛行機に搭乗する
。
昼間なのに伝えたいことがたくさんある
交通規制のひかれた交差点で
鱗を剥がしながら話していると
記号の断片しか口から出てこない
群青の海に消えかけている飛行機雲
目的も目的地もあやふやにして