ポエム
[TOP]
季節


足元の小さな一段下
花が海に濡れた
昨日、きみが
わたしのために育ててくれた花
名前をつけそびれて
それっきり咲いた

木々の陰影
夜明けに私鉄が発車する時の
孤独な音のひとつひとつ
特定郵便局の裏口あたりで
局員が手指を海で洗っている
昔からそれは
春の訪れだった

名前もないまま
海に揺れているあの花は
多分わたし自身
窓、開けておいたよ
そんな季節の話に夢中になって
きみの横顔ばかり
ずっと見ていた

その後、二つ三つ
言葉を足した
生きることと
その不確かな匂い
わたしたちはここにいる
と、知った時から
きみと
結婚したいと思っていた

24/03/21 07:32更新 / たけだたもつ



談話室



TOP | 感想 | メール登録


まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.35c