象の夢
夢の中で
年老いた象が悲しそうな顔をしていた
どうしたのか、と聞くと
故郷のアフリカに帰りたいのだと言う
草原で捕獲され
動物園に運ばれてからの調教師との親交や
子供を出産したことなどを一通り話し
もう、故郷のアフリカに帰りたいと泣くのだった
ここは夢の中だから自由だよ
さあ、お帰り
その言葉に象はすっかり安心して
嬉しそうに去っていった
目が覚め
この年で象の夢なんかを見たことが
妙におかしかった
寝床から檻の中をぐるりと見渡す
身体の節々が痛いけれど
お勤めのためによっこらしょと立ち上がる
長い鼻の先が
少しかゆい