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未明のラジオ体操


未明のラジオ体操で
待ち合わせをしていると
あなたは幹線道路の方から
しろやま公園に入って
産声をあげた
町内会の会長さんは
壇上に上がり
体で体操をしている
お手本だから左右反対で
わたしはそんな手足が動くたびに
昔、割ってしまった
鏡のことを思い出すのだった
この町内には海があるらしいけれど
まだ見たこともなければ
船の匂いもしない
あなたはまだ産まれていないかのように
静かにしているから
その間に幾つかのなぞなぞを考えて
仕舞えるところも探した
会長さんの手足に合わせて
体を動かしてみる
あなたはくすぐったいひとつとなり
抱えた両腕から落とさないように
私物の整理と
深呼吸で精一杯だった
伝えたいことは紙の方が伝わる
何かの言葉を思い出して
なぞなぞの正解を書き出し
係の人に渡すと
今日の日付のところに可愛い
魚模様のスタンプを押してくれた
会長さんの踵の隙間から
朝日が差し込む
ラジオ体操も公園も消え
あなたもわたしも
まるで最初からなかった
多分、後には
海だけが残った


23/06/16 16:55更新 / たけだたもつ



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